戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
決意を後悔をしたり失敗に嘆くのも、全ては“あと”だと学んだ今でしかないから。
当時の自分をバカだなんて今は未だ言えないし、とても嘲笑して言いたくも無い。
ノリユキを愛してた自分をここで否定したら、あと私には何が残るっていうの…?
「はー…、明日もパニーニのリベンジに行かなきゃ」
「えー、私は嫌だからね。
明日はパスタだって言ったの、数日前の怜葉なんだけど」
「…ホント物覚え良いよね」
由梨にグダグダと愚痴を零したものの、サーッと現実に引き戻る休憩タイムの終わり。
ハンドバッグ片手に重い足取りを引き摺って行くのは、決して私だけではないだろう。
都内でも中枢のオフィス街に位置する職場には、誰しもが期待を胸に入社した筈なのに。
理想と現実のギャップや理不尽な事の数々で、オフィスへ向かう気分は下降気味と思う。
タワービルへ吸い込まれて行く女性たちの姿を、ぼんやり他人事のように捉えながら。
私もまた由梨と一緒に、同じようにして目的地であるタワービルを目指すしかない。
「怜葉、顔が引き攣ってる。気をつけなよ」
「あ、ああ…、ありがと」
マジックミラーに映った私の残念な表情のせいか、ピタリと歩みを止めた由梨に苦笑だ。