戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
何食わぬ顔で続けざまに“少なくとも…”とロボット男が発した瞬間、パンと襖が豪快に開く音が室内に小気味良く響いた。
それはなぜだか、あまりに中途半端なタイミングでやって来たマーくんだ。
なんとも言えない空気が入り乱れたお陰で肝心の押し問答は続かず、あっけないエンドを迎える羽目となる。
さらにアッサリ腕を解かれたことにより、恐る恐るロボット男を見れば至って普通の面立ちだったため余計に腹が立った。
「俺も一緒に食べるー」
「…迷惑。ひとりで板場で食べてて」
「姫ぇー…、久しぶりじゃん…」
木目調の美しい艶々なテーブル上には、彩の華やかで繊細な会席料理が徐々に運ばれて来るはずが。
どう差し引きしても空気の読めないマーくんの突然の乱入は、失礼だろうともイイ迷惑でしかないわ。
「あーあひどいなひどいな…。
俺だって一緒に食いたいし、かわいい姫と話したいし、かわいい…」
「ああ、もう分かったから!お好きなようにどうぞ」
まさに八つ当たりと等しいが不快感を露わにすれば、なおのこと項垂れて鬱陶しさに磨きのかかったマーくんに根負けし、つい昔のクセで相席を勝手に了承していた私。
それでも跡取り息子が共に食す時点で、御代を取らないのは昔からのお約束であるからと、隣から感じた訝しげな視線はスルーしておくこととする。