戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
大体今がムダな時間と睨んでくるくらいならば、一刻も早く本命の元へ帰って欲しいものだ。大切な朱莉さんのところへ急いで…。
「うんうん、それでこそやっぱり俺の可愛いひ、」
「…マーくん、あと一文字言うなら帰る」
「いやいやいや、もう言わないぞ!」
「うん。それならお腹が空いたから食べようよ」
「りょーかい。可愛いおひめ」
「…やっぱり」
「うーわー、それなら姫君…!今しがたお待ち下さいませぇええ」
だけども、明らかな嫉妬心を見せる言葉を吐きたくないからと。
結局のところ、以前と同じ調子で気楽に話せる、マーくんとテンポ良く会話を重ねて逃げたのだ。
それから食前酒や前菜から順に運ばれて来ると、どうでもイイ小さい頃の昔話をつまみにして食事を始めた。
お酒が入ったことで余計に饒舌となり、うるさいほど色々と話し続けるマーくん。
同調すればさらにヒートアップする彼に、もはや室内はマーくんの独壇場と化していた。
その内容といえば、昔から私は着物が似合っていただとか、このお店の職人が作る和菓子を特に好んで食べていただとか、まさにどうでも良い小さなことばかり。
ふと考えてみれば、彼と一緒に遊んでいたのは数年ほどだったのだから、どれだけ記憶力が良いのかと驚かされたのも事実。