戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


それをどうしてこの男は、またも中途半端な優しさを見せるのだろう?どこまでも憐れでしかない、この位置が更にイヤになった瞬間だ。


そう考える私こそ、どこまで都合が良いのだろう?見捨てないと言ってくれたからと、その日からずっとロボット男の心を求めたことが悪いというのに…。



「…専務。ぶ、無様な姿を見せて、すみません…っ」

「怜葉さん、俺は…」


「わ、私は!傷ついてませんから…」

何かを言われることも怖さを覚えてしまい、それを遮って言い切った言葉は精一杯の強がりでしかない。



社会人は諦めることは当たり前の毎日であって、我慢することに慣れているのもまた大人である証拠。


今はもう大人として、少なからず経験を重ねて来たから大丈夫。泣いているよりも早く、嘘の笑うことを選ぶだけの選択肢を得ているのだから。


感情任せという意味も然り…、私の勝手な行ないや発言に対して苛立っていたに違いなくて。


だからこの場合、これ以上は何も聞かないことが正しいと思う。すべてを遮ることで、その場から上手く逃げるが一番である。



「き、着物もちょっと着崩れてきてますし…、とにかく今は、ちょっと眠りたいんです…。
すみませんが、マンションへ送って下さいますか?――それと今日は…色々と失礼を働き、申し訳ありませんでした…」

「…いえ、」

もちろん取り繕いのためであって、着物の苦しさだとか睡眠不足は真っ赤なウソだけど。


ロボット男が淡々と肯定してくれた以降、再び車内は異様な静けさで包まれた。



何かを受け止めるほどのパワーも失せていたから、ちょうど良かったのかもしれない。


ただ思うのは…、どうせならばキッパリ切り捨てて欲しい。私は所詮、どの場でも“2番目”の女であるから――


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