戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
速攻を仕掛けてエレベーターに急いで乗り込むと、閉のボタンを連打して難を逃れた。
ますますの状態悪化な様相に、バクバクとうるさい心臓付近を抑えて呼吸をしていたのだが。
「何アレ!格好良すぎー!」
そんな私はココでも置き去りで、連れ立ってきた彼女だけがキャーキャー騒ぎ立てている。
「ていうか、さり気なさにキュンキュンしちゃう。
やっぱりクールな貴公子よねぇ、専務って」
イヤイヤ…ちょっと待とうか、由梨。さっきの発言は、ただの嫌味の吐き捨てでしょうが。
ついでにヤツはクールな貴公子じゃない。あの感情ゼロなロボット男に一切トキめくな…!
温かみどころか、笑顔のひとつも見せない男のドコが良い?冷たい男はまったく以って御免だわ。
もしクールの中に隠れた優しさでもあれば、ソレはそれで良いのかもしれないけども。
あのロボット男の本性は間違いなく、ツンドラ地帯に永住権を得るほど感情ゼロだ。
とはいえ。間違ってもこの指輪が活きるコトは無いから、色々とどうでも良いか…。
「こら怜葉、助けて貰ったのに何その顔」
キャーキャーとひとしきり騒ぎ立てた由梨は、悟りを開き諦めた顔の私を窘めてくる。
「ロボ…いや、専務は“流石”だと思ってね」
「そりゃあ、そうでしょ。だって、専務だもの」
あやうく“ロボット男”と言いかけたものの、イヤミな一言のお陰が功を奏して気づかなかった彼女。