戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
それどころか。そのイヤミをサラリ肯定して頷いてしまうのだから、寧ろコチラがどうするべきだろう?
するとポンと到着音とともにエレベーターの扉が開き、ようやく通い慣れたフロアへ戻れた私たち。
「ただいま戻りました」
「おー!緒方さんと専務ってラブラブだなー」
“お帰り”の代わりに能天気な主任から返って来たのは、身の毛もよだつフレーズ。
先ほどの一件は私たちのエレベーター乗車中より早く、周囲に伝わっているようだ。
唖然とする外ナイ私をよそに、なぜだか先ほどの専務の発言が武勇伝になっている。
ITなんて廃れば良い――と脳裏をよぎる考えを、ニッコリと笑って滅却する外なく。
デスクにつくと、ひたすらにPCと書類と睨めっこをして、仕事外の喧騒を一切シャットアウトしてしまった。
右手の薬指に填まっているダイヤの輝きは、いずれ朽ちるイミテーションと同じだから…。