戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


それでもいつも以上に素肌を晒したスタイルだから、その真っ黒な瞳でジッとチェックされるのは辛い。



「いや…、見立てた通りだ。怜葉さんによく似合っていますね。

ただ、ヘアはフルアップが良いかと。あとネックレスはシンプルに、一粒ダイヤで。
それとピアスは品よく、ネックレスとは別シリーズのダイヤで用意して下さい。
もちろん輝きは大切ですがアップにする分、目を惹くデザインでお願いします。
最後に靴ですが、いま履いている黒より、アクセントとしてエナメルの赤にしましょうか」


「は、はい…!かしこまりました」

小さく頷いた彼から、どうやらお世辞なりの合格点は頂けたようだが。

ここでも業務的に、淡々と様々な指示を告げるものだから、その方に仰天したのが本音だ。



ここまでもが貴方の独壇場なのですか。というより、あまりに指示が早すぎて店員さんアタフタでは…?


誰もが知る、憧れのセレブ・ブランドであっても、この男にかかれば値段よりデザインが対象とは恐れ入る。


そうこうするうちにロボット男が命じた、店長さんの指示を受けた何人もの店員さんが、何往復も重ねて小物や宝飾類をここまで運んでくれた。



またまた驚きなことに彼といえば、それらを私につけさせることなくチラリと一瞥するだけで、瞬時にドレスとの相性やデザインに判断を下すから圧巻もの。


こうして淡々と早々と過ぎゆく時間もまた、この男が何者なのかと気になる材料を作り出していたが。



彼のお眼鏡に適ったお値段もすこぶる高い宝飾品を身につけるごとに、“ロボット男好みな女”へと仕立て上がる――



「ああ流石だ。怜葉さん、綺麗ですよ」

「…それは、ありがとうございます」

普通ならば決してご縁などない、とてつもない高揚感に酔いしれさせ、その姿で満足したように小さく笑うとは卑怯。


こちらの方が上手く笑えないというのに、最大の賛辞を頂いてしまったから。


もう私はこの先、偽の婚約者として朱莉さんの代わり役を演じるしかない…。



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