戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】



私の戦隊ヒーローに近しい変身を見届けた彼に“では、俺も準備します”と告げられ、店主らしき人を連れ立って置き去りにされた。



広々しいフロアが静まって居心地の悪さを覚えたものの、華やかメイクとフルアップ・ヘアの仕上げだと、むき出し状態の肩にホワイトのショールを掛けられた。


ちなみに細いワン・ショルダータイプの落ち着いたネイビー・ブルー色のドレスの裾は、幾重もの繊細レースがふわりと揺れている。


さらに私ならば絶対にネイビー色とは合わせない、赤色のエナメルのハイヒールが鮮やかなアクセントを醸しているのだ。



これはどこを取ってみても完璧――ソレを着ているのが、ごくごく普通な女であることを覗いてはね…。



「どうしましたか?」


「え?あ…、専務」

部屋にいるのもつまらないからと、見せて貰っていた店内の散策もすぐに疲れ、お洒落なスクエア形のスツールへ腰を下ろしていた所へ届いた声。


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