戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
泣き疲れるだけ涙に濡れていた中で、ゆらりゆらりと安定感のある心地よい揺れがこの身を包んでいた。
思えば準備の時点で緊張しきりだったのだから、すっかり疲れきった身体は言うことを利くはずもなく。
さらには悟くんが掛けてくれたジャケットの暖かさも相俟って、まさに心身ともに疲弊していた私はとうに限界だったのだ。
泣き疲れたと感じたのは、果たしていつ以来だろう?
耳慣れた声が聞こえた気がするけども、ああどうでも良いか。取り敢えず、この居心地の良さに身を預けていたい――
「・・・ん、」
うっすら光を感じて薄ら目を開こうとしたが、まるで貼りついてしまったのかと思うほど重い瞼がそれを邪魔した。
再度ゆっくり開けることで視界が広がったものの、どうやら私はあれから泣きながら眠っていたようだ。
そのまま視線を動かせば白く平坦なシーツに包まれていて、それが心地良さの原因だったのかと納得。
状況把握をしたお陰でようやく、今も重い目がパッチリ大きく開けた。
そう、ここは間違いなくベッドの上であるけども、一体どういう経緯があったの…?
キョロキョロ辺りを見渡せば、ゴージャスさを醸し出すロココ調のお部屋によって今度は上体を一気に起こす。
「ここって…」
「ホテルですよ、」
「へえ…って。えええ!?」
やたらと広すぎる室内でポツリと虚しく呟いたはずが、まさか反応が返って来るとは驚嘆するばかり。