戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


むしろ幾度となく、微妙な位置から名を呼ばれ続けるのは苛立たしいものであった。


そもそもロボット男の他に私しかいない状況で、わざわざ名を読んで下さらなくて結構。


こうなれば口を塞がれたことは葬り去ろうと、思いきり嫌な女候(そうろう)に睨みを利かせて思いの丈をぶつけた。



彼との会話の中でプラスに転じるものがない今、残されているのは強がりという名の開き直りだけ――



「つまりそれは、好きと言えと?」


「っ、なに!?」

苛立ちがスッと経ち消えたその刹那、トンデモナイ言葉がロボット男から投げられた。

あまりに突飛な発言で、目を丸くするのは当然であろう。



「何が言いたい、というので」

「い…、意味が分かんない!だいたい私に義理を働く必要なんか、」

「そもそも私は、義理を働くほど暇ではないので」


「はぁあああ!?」

明らかに狼狽する私に構わず、平然とそう言いのける男はそれが当然と言わんばかり。


いやいや、こちらのパニック度合いもスルーして、一体どういう心づもりだ…?


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