戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
パチパチと忙しく瞬きをしながら、力の限り叫んだのは無理もないだろう。
あからさまに、五月蝿いと言いたげに眉を寄せる男こそ、義理人情や感情論といっさい無縁なロボットではないか。
そうとは分かっていても、先ほどの発言の強烈さで息苦しくて堪らない。
見事に黙ってしまった私にそんな爆弾を仕掛けた挙句、その様子を平然と窺ってくるとは。
一般人にはおおよそ縁なき、その冷淡さが今日はなぜか羨ましくなった。
「さて、どうですか」
続いた沈黙をあっさり解くように、真っ黒な瞳がまた私へ言葉足らずの難問を掛けて来た。
パニック状態では到底正解が見つかる筈もなく、口をパクパクさせて空気を呑む私はさながら金魚だろう。
ただ、無様でしかない姿さえ気に留める素振りもゼロ――この男はまったく気にしていない。
ここでもまた、ためらう態度が好ましくないようで。突然の疑問符への回答権に与えられた時間は、わずか十秒足らず。
なおも飄々としてこちらを捉える、勝手なロボット男から目が逸らせない。
その至近距離で彼を見れば見るほど、端正で迫力ある整った顔立ちに苛立ちを覚えた。
「…どうもしません、」
「どうして?」
「好きじゃ、」
制限時間到達の寸前で、ようやく生み出せた答えはありきたりなものに違いない。