戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
あれほどの強い理性をアッサリと失い、今どうしても抗えずにいるのは――わずか数十センチの距離で触れられる男のせいにさせて欲しい。
惨めだと分かってる…、きっと今後に何も残さない慣れ合いとも分かってるの。
彼に抱かれてしまえば、本命の朱莉さんを傷つけると分かっていてももう動けない…――
ふっと力が抜けたことはお見通しであったのか、易々と唇を割って腔内へと進入してくる熱い舌。
この温度の心地良さを知ってしまった状況で拒める訳なく、歯列をなぞるゆるい温度へ導かれるように絡ませてしまう。
唇の端から漏れるようにゆるい温度の唾液が伝えば、瑞々しいリップ音が静かなスイートで妖しいものと響くから。
すでに速い鼓動はその次を待ち侘びるように、バクバクうるさく鳴り響いて止まらない。
「あ、…んっ」
すっかり熱に絆されて力が抜けたその時、唇から首筋へと移ったキスの嵐に吐息が甘美に漏れていた。
骨ばった長く綺麗な指先が、それを増すように動きを速めて身体の熱を上昇させるから。
女であることを知らしめる箇所を、じわりじわり弄られれば籠っていた温度は押し上がるのみ。