戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
そのロボット男によって選び抜かれた華やかなドレスは容易く、シルク素材のためかスルリと肩紐を外れて身を露わにしてゆく。
あまりに性急かつ緩急をつけた巧みな動きで翻弄される間、背中に回されていた手によってブラのホックを外された。
それさえも華麗に奪われてしまっては、心まで攫われそうでゾクリと心が震ってしまうのもまた事実。
徐々に露わにされていた素肌より。奥底に根づいている本心までもが、彼の手によって引きずり出されてしまうのではと不安が包み込む。
それでも止めて欲しい、と言えないのは――専務の扇情的な眼差しのせいであった。
「ああ、やはり綺麗ですね」
「…あぁっ、」
ゆるりと口元が緩んだ瞬間。途轍もないセクシーで重低音の声色が、さらに深みへ嵌まらせる一撃となる。
潤いを良しとして重なり合えば。重みによってギシリとベッドのスプリング音に、ピチャリと妖しい水音が激しく共鳴する。
相俟って、執拗かつ的確な愛撫を受けては、悦ぶように自身から熱い吐息と同じく漏れゆく甘い声。
それがまた彼の動きを速める一因だと感じれて嬉しかった――そう、一度ついたシミが易々とは消えないように。
一度知ってしまった感触を、人はまた忘れられる訳がない…。
分かっていて身を委ねた浅はかな行動を、傍からは最低と思われても――愚かだとしても抑えられない。
それほどに、こちらを捉えた時の眼がまた日常を引き離してしまうから。
好きで仕方ない男の誘いは、ぴしゃりと断れる確かな術が見当たらないのだ…。