戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
すべての落ち着いた所作にソツがなく、とにかく育ちの良さを見せしめるソレらに鳥肌が立つ。
普通の女性ならきっと、ここで失神するかキャーキャー騒ぐのだろうからアリエナイわ。
「――話がありますので、一旦中へ入れて頂けますか?」
「・・・は?」
形の良い薄めの唇で淡々と言葉を紡ぎ出したかと思えば、今度はコチラに近づいて来た彼。
「鍵を開けて頂けないかと」
「何で、ですか?」
「込み入った話、と言えば解りますね」
鋭い視線と嫌味を混じえて尋ね返したところでロボット男に敵う筈もなく、手にしていたキーを鍵口へ差し込んだ。
そのドアノブに手をかけて重い扉を開けば、結構待たせていたであろう一応は上司へ先に入るよう促した。
狭さはもちろんだけど。元々が閑散としているから、綺麗とか汚ないなどといった心配はゼロで構わない。
まさに寂しい独り暮らしに映るだろうが、別に気にした所では無いし――
「お邪魔します」
「…いえ」
むしろ狭い中へと躊躇いなく足を踏み入れたロボット男に、この部屋が似合わなすぎて笑っていしまいたい…。