戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
野暮な疑問符が浮かんだものの、つまるところ他人に教えて貰ったことを鵜呑みに出来る状況にはなく。
まして気を許して掛けていた私は、この熱が愛しくも感じていたのだから滑稽なもの。
「あぁ…っ」
彼に女性らしい膨らみの頂を甘噛みされれば、何かを考える余裕がまた奪われてしまう。
さらに続く手の繊細な動きはあまりに的確すぎて、その度にピクリと身体が小さく跳ねた。
甘い声とともに弓なりにしなる身体はされるがままで、ただそれに応えることに必死であった。
「ッ、やっ、んん…っ」
自尊心がひどく傷つけられ、無様に泣き腫らした顔まで見せているだとか。
この男とのセックスは初めてなのに、あいにくシャワーを浴びていないことだとか。
挙げれば次々と浮かぶ、キリのない後悔など本当にどうでも良い――
今まさに最奥へと激しく突き寄せられ、甘く痺れる感覚があまりに鮮烈でさながらスパーク寸前であったから。
背中へ手を回した目の前の厚い胸板は、ジェンダーの違いと彼のオトコらしさを強調させるばかり。
さらには時おり漏れる、互いの荒い吐息が心拍数をぐっと押し上げるほど。
内に秘めた想いが溢れないように口を噤む外なく、その息苦しさに生理的な涙がツーと頬を伝っていた。
「泣く必要ないでしょう?」
「っ、ちが…」
「まったく…、貴方は不思議な人だ」
最中にも拘らず、ふと自嘲気味に小さく笑うロボット男の冷淡な声色で窘められる。