戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
愛のないセックスと初めから承知していて、それでもロボット男を求めたがゆえの結果を言うのはナンセンス。
だけども後先をどうこう考えられずに、すっかり理性も正気を失っていた。
緩急をつけて触れる指先の動きや、ゆるい独特の温度があまりに心地よいもので。
結局はそれらにすべてを委ねて逃げて、目の前の快楽を貪っていたのが正直なところ。
だから、自身の首をまた締めるだとか、彼の大切な人を傷つけている事実からすべて背いてしまった。
確かに、無礼講として許される時がある。…世間を甘く見ていた時なら、“過ち”として許されるかもしれないが。
年齢や精神的にも、色々と悩み悟り始めた現在。私はもう20代半ばの立派な大人で事実、若さと遠ざかっている。
まして過ちを犯した相手は、生活を掛けて勤める企業の重役のロボット男――
彼に抱かれた事実は、身体の奥に深く刻まれて消えないから苦しい。それに、到底このまま穏やかに過ごせるとは思えない…。
「怜葉ー?」
「…うん、」
「トッキー」
「…うん、」
「…トッキー、いつも以上に変だ」
ぽかぽか暖かさの伝わる今日の天気模様。それをタワービル内からぼんやりと見ながら生返事を返していた私。