戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


どうにか就業時間から1時間を過ぎて私たちが向かった先は、由梨が彼と来る予定だった欧風料理店。



外観は黒をベースとしたシックな建物ながらお店の中は予想を覆し、良い意味で高級感を纏わずにシンプルである。


何でも由梨によれば、気安いカジュアルさがデートに好評だと友達に教えられたらしい。


予約席へ案内されて落ち着くと、私たちも例に漏れずウッディな雰囲気に包まれていた。



「それじゃあ、乾杯!」

月明かりのような鈍い色の間接照明を受けながら、向き合う彼女とグラスを小さく掲げての乾杯で食事をスタートさせた。



温かみある色合いの小物類や室内を優しく灯すキャンドルが、まるで海外のお家にやって来たような錯覚に陥らせてくれる。


お料理の美味しさが一番大切であっても、こういった所でセンスあるお店は客に心の満足感も与えてくれるから重要なポイント。



お酒の好きな私が今回、食前酒としてチョイスしたのはスプリッツァー。

そのお酒の正体は、度数の低い白ワインと炭酸というとても簡単なカクテルである。


シュワシュワと弾ける感覚で白ワインが柔らかく感じるから、欧風料理ではよく注文していた。



「怜葉ってホント好きだよねぇ…、オリーブ」

「もちろん。この触感が好きなの」

そんなスプリッツァーに合わせるおつまみは、冷製ものならば“黒オリーブ”と“生ハムやチーズの盛り合わせ”が最高。


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