戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
口当たりの軽いお酒であったことに感謝し、白いナプキンで口元を拭って自嘲笑いを浮かべた。
そもそもロボット男については、仲の良い同僚でさえ一切語らずが最適と思う。
「でもさぁ、冗談置いて可愛くなったよね」
「…どこが、」
「んー、そのネガティブ思考は相変わらずだけど。
何かねぇ、表情が柔らかくなったと思うよ」
「…そう?」
「うん、恋する女って感じ…あ、もう恋ってカテゴリじゃないね」
友人としていつも優しい由梨は、その飾り気ない優しさが彼に愛される理由のひとつだとよく感じる。
お酒が少し入ることで、いつものテンポの良さが落ちるところだってまた可愛らしい。
入社してから知り合ったけども、彼女は本当に自分の心に素直で本能にも忠実に生きていると思う。
感情表現が下手で可愛げのない私からすれば、社内でも男女問わずに仲良しの同僚が多くて羨ましい存在。
「…うん、恋じゃないよね」
「あら、珍しくノロけたわ」
「…違うって」
対して私は、都合よく愛されたいと願うばかりで。実際のところ何のアクションもしなくて。
都合よく言い訳をして、数々のトラブルから逃げて来た――今まではそれで良かった部分もある。…いや、目を瞑って来たにすぎないけど。