戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
一般的というのか別段、男性履歴が多いとは思わない。それでも過去のどれもが、思い出として刻まれている。
そう、付き合ったと言えるのかさえ甚だしい、数か月前までベッドを共にした男を、たったひとり除けば…。
「れい、は…ちゃん?」
「――違いますよ。怜葉でときは…」
「うん、分かってるよ――イメージにピッタリだと思って」
――これが紹介で知り合った、元彼のノリユキと初めて交わした会話。
不快感を煽る発言をした失礼な人と感じたものの、その第一印象が原因であったためか。
それから徐々に打ち解けるにつれ、会話のスムーズさと年上の男らしいスマートさに惹かれていったのは私の方であった。
「怜葉と出会えてよかった」
「…うん、私もだよ」
知らないことや世界へと誘われるごとにのめり込んで、どんどん彼を好きになっていた。
私と居る時間が落ち着くと言ってくれた彼とは、いずれ結婚するものだと考えながら舞い上がっていた。
結婚後も出産直前までOL生活を続けるか否か…、まで考えていたとは恥ずかしくて言えない。
ましてすっかり愛した男に絆された末。なけなしのお金を騙し取られて逃げられた――と、被害者ぶって糾弾する方が恥ずかしいものと思えた。