戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
そのバーというのは由梨の友人の友人のハトコとかいう、マスターの煌さんという男性がとても素敵なのだとか。
彼が作り出すカクテルはとても美味しく、そして合間のリップ・サービスも楽しめるらしい…。
誘いを掛けて来た由梨は、何度もごめんねと申し訳なさそうに呟いていたものの。
ニッコリ笑ってそれを牽制すれば、内心でホッと安堵していたもうひとりの自分がいた。
ノリユキの姿を見つけたことで、治まらない動揺を勘付かれずに済んだため、ある意味で救われたのかもしれないと…。
すると仕事途中の息抜きだとかで、駅からほど近い職場の彼氏が迎えに来てくれることになった由梨。
嬉しさが露わにする彼女とは、駅のロータリー付近で楽しい雰囲気をそのままに別れた。
終電にもまだ余裕ある時間帯の地下鉄に乗り、わずか数個の駅で降りて到着したのは高級マンション。
コンシェルジュさんの恭しいお迎えに挨拶を返せば、超高速エレベーターが目的階へ送り届けてくれて今に至る…。
「――あー…、面倒になって来た」
昔から頭の中で整理がつかなくなると、あれこれ考えること自体を放棄する怠惰な私。
ササッと最近を思い起こしてみれば溜め息しか吐き出せない事実に、もはや笑ってしまいたくなった。
結構な量のお酒を飲んでいたし、軽くシャワーを浴びて済ませようとも思ったが。
ルブタンのハイヒールで歩きすぎた足は疲れてきっていた。仕方なくボタンひとつで豪華なジャグジー風呂の準備を終えた。