戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
ササッとメイクを落としてお湯へ浸る現在――浮腫みと気だるさの感じる足を中心に、コロコロ・ローラーで必死にマッサージを行っている。
デスクワーク主体の運動不足な日常が、こうした時に現れるから残念なもの。
これが10代の時であれば、大学のレポートやお遊びでオールしても大丈夫であったというのに。
どうやら20代になると、1歳ずつ歳を重ねるごとに基本的な体力が失われてゆくらしい。
今さらだけども、由梨レコメンドのヨガか加圧トレーニングあたりを真剣に始めてみようか?
マッサージ・グッズでのケアを終えると、ぶくぶく細かい気泡を両手で掬う度に、ちゃぷんとお湯の零れる音がバスルーム内に響いた。
こうして別のどうでも良い問題へ本題とすり替えてしまうのは、昔から変わっていないクセで。
ただノリユキがかなり近くに居ることを知ったものの、どうすれば良いのか分からないのが本音。
「…今さら、すぎるよ」
まったく働きの悪い頭を振り、膝を抱えてジャグジーの中で身を縮ませれば。
昨夜ロボット男につけられた紅いキスマークが、ちょうど洋服に隠れる胸やお腹や太ももの付近にあった…。
男の所有物という証とよく言われる、胸に残されたその紅い痕――何かに縋るように、人差し指でそっと触れてしまう。