戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
彼の言い放った、“実家”は私が大嫌いとするフレーズだ。ソレで息苦しさを覚えてしまうほどに。
「怜葉さん、どうしましたか?」
「い、いえ。し、資金援助…は、受けてません」
だけども、逃げようとしても敵わない相手と諦めた。グッと心臓あたりを掴んで、狼狽しつつもどうにか答えた。
「――ですから、困るんです」
「…何が、ですか」
家のことなど、この男には何ら関係が無い筈なのに。嫌味混じりで、ひとつ溜め息を吐いた理由はなによ?
どうにか感情を抑えて、努めて冷静に尋ねられた事は、こんな私の小さな成長だろうが。
ソレでも向かいに座るロボット男に目を向けられないのは、まだ弱い証拠だと思えてならない。
「今日限りで、此処を出て頂きます」
「はぁああ!?」
「手続きも完了してますし、そのままで構いませんから」
「ちょ、ちょっと待ってよ!
なに勝手なコトするの!?ふざけないでよ!」
しかしながら。またしても彼が淡々と発する態度と勝手な行動に、カッとなり言い返した私。
「その言葉遣い、やはり頂けませんね」
イヤイヤ、そういう問題ではないだろう。貴方の行動こそ、“イタダケナイ”のでは?