戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
フラストレーションの赴くまま、嫌味を連続投下していた私はここでようやく白旗を上げた。
負けと強く言い切ると同時、シャツを掴んでいた手をパッと素早く離したというのに。
「それは結構です」
「はぁ!?」
この身が今度は彼の強い腕の中に囚われてしまい、残念なことに身動きの取れない状況に陥ってしまう。
「意味分かんないっ、離してよ!」
「それを貴方が言いますか」
じたばた足掻いてみるが――こういう時は所詮、女の力のなさを痛感させられるだけ。
どこか呆れた声色の男の香りと体温が、昨日のリアルをまた悲しくも思い起こさせた。
激しく求められた分以上に、何度でもそれに応じてアッサリと身体を開いて。
その度に喉で痞えていた“私の方が愛してる”の言葉を、どれだけ口にしたかっただろう?
本当はもう一日だけ…いやずっと、と専務との甘いセックスに浸りたかった。
そんな感情を絶ち切るには、1日に満たない時間では到底こと足りないというのに…。
「っ、よ、酔っぱらって――間違えたの…!」
早くこの状況から抜け出さなければ。間違いなくあと少しで、自制心の糸が切れてしまう。