戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
翌日が嫌だと憂欝に思いながらも、サーッと呆気なく過ぎれば当然。嫌な原因へと行きつくのはすこぶる早い。
なぜ行かなければならないのかと苛まれつつ、こんな時くらい風邪でも引けないかと願ってみたが。
根本的に忘れてならないのは、か弱さといっさい無縁な自身の丈夫さであった。
さらに由梨や加地くんからは“元気ない”と心配されたものの、とても理由を言える筈もなく。
明らかにムリヤリであっただろう笑顔でやり過ごしたのは、つい先ほどまでのこと。
しかしながら、私の複雑な理由は朱莉さんと会う前から余計に増幅していた。それはデリカシーのない冷淡な男から届いたメールが理由――
【朱莉と所用を済ませてから向かうので、会社近くのレストランで待ち合わせましょう。
店の名前は“mirage”。19時に待っているので、怜葉さんお願いします】
ちなみに本日のバトル会場…いや、お食事を頂くお店は会社から徒歩圏内の高級店。
以前にロボット男と食事したイタリアンより格式高いと思われるため、いつも以上にオシャレには気を配ったつもり。
マーク・ジェイの幾何学模様ワンピースにルブタンの黒パンプスを履き、バッグや小物類はシンプルなフルラを合わせてみた。
そんな意地を張ったところで結局は、朱莉さんの素の美しさには何も及ばないだろう。