戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
当たり前のように隣り合って座る、ロボット男と朱莉さんの視線が突き刺さる。予想通りに、居場所のなさを露して虚しい。
仲睦まじい彼らの中へ偽者が加わる2対1など、一体どこで和やかな雰囲気が作れると言うのだろう?
2つの眼差しが突き刺さるように感じる状況下に、早くも心がズキズキと鈍い痛みに苛まれた。
それでも踵を返さずに済んだのは間違いなく、私の背中をそっと押してくれた悟くんのお陰。
1人であれば逃げていた…いや、それどころか先日と違って泣いていたに違いない。
「俺も良いよね?」
「――どうぞ」
「彗星、それは失礼よ――ごめんなさいね、お二方どうぞ」
「だって――怜葉ちゃん、さあ」
自分のことで必死な私は、この歪なトライアングルに加わった悟くんが、専務に対して軽口を叩ける理由を知る筈もなく。
着席を促した朱莉さんへの対応に困惑し、昔と変わらない優しさへすがっていたのだ。
紳士的にエスコートされて彼の隣の席へ着いたのは、まさに感謝すべき流れであった。
様々な感謝の念を込めて“ありがとう”を告げながら、自然と零れる安堵の笑みを悟くんへ向けたものの。
視線を正面に切り替えた瞬間、それが場違いであったように表情が強張ってしまう。
――真向かいで動向を窺っていたらしい真っ黒な瞳が、いつになく冷たい色を成していたため。
まるで少し解れていた緊張の糸が再び、ピンと張り巡らされたかのよう…。