戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
これからコース料理が始まる――あとどれほど、この息苦しさと付き合わなければならないのだろう…?
「ねえねえ――怜葉ちゃん、って呼んでも良いかしら?」
「…え、はい、もちろんです。…何でしょうか?」
さっそく柔らかく高い声色で呼ばれてしまい、意識を斜め向かいに座る朱莉さんへと集中させた。
目下花嫁修業中という彼女には、忙しいOLのような日中の疲れが感じられず。
まるでその美しさが、この夜に最も咲き誇るように標準を合わせたかのよう…。
ただのOLとの違いを改めて目の当たりにし、それだけで屈したくなるところではあるが。
濁りのない瞳から視線を逸らすのは、微かなプライドがダメだと拒否していた。
「いつも彗星がお世話になって、本当にありがとうね――ほら、大変でしょう?」
「…い、いえ」
「えー、遠慮しなくて良いのよ?
だって彗星は昔から、口はすこぶる悪いし、何考えているのか分からないしねぇ」
見るだけで感動に値するフランス料理をよそに、不満げにそう口にする彼女の真意が見えない。