戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
そもそもロボット男との始まりは、自身のバカさ加減が招いた事件が発端だ。そこから契約を交わして今日に至っている。
原因の元彼・ノリユキとの結婚を勝手に夢見て騙されたうえ、借金まで背負ったのはすべて、ヒトの見る目がなかった私が悪い。
ただ入社数年の一般OLでは到底、返済メドの立つ金額ではなくて絶望したのも事実。
お金があるから幸せと思えないのは、肌で感じていたから。ただただ、ごく当たり前の温かさを求めていた。
だからこそ同僚と楽しく働けて、“安らげる”と言ってくれる彼が隣にいて、学生時代の友だちと女子会をしたりとか。
衣食住には困らない生活が、私にとってようやく幸せと思える日々だった。
――これが崩れるかもしれない…。そんな当たり前と信じて止まなかった日常の危機に立たされ、付き纏ったのは孤独感と後悔ばかり。
浅はかすぎた行動とお金の工面をどうすれば良いか…、とかく悩んでも答えの出ない、辛すぎるそればかりを考えて眠れない日々が続いた。
もちろん、名古屋へおずおず戻ればきっと。資産家として地方で有名なおばあちゃんは、躊躇いもなくお金を用意してくれることが分かっていた。
普通のOLとして働く私からすれば大金でも。おばあちゃんにとっては、所有する株の配当金に等しいほど大した額でない。
でも自由にお金を頂いていた訳でなく、きちんとお金のありがたみを厳しく教えてくれた人である。