戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
何よりもコンプレックスの塊だった、兄と比較されることが嫌いな私。
頬を濡らす存在に気づいていたけど。それを理由にして逃げる方が屈辱だと、指先で両目をゴシゴシと力任せに拭った。
これが悲しいのか苦しいのか分からない。だからこそ、これ以上は涙を流したくない一心で。
俯いて彼らの視線を遮ると、膝上に置いた両手には自然に力が入っていた。
「怜葉ちゃんごめん。そんなつもりじゃ、」
金切り声を上げてから、暫しの沈黙が室内を包んでいたが、窺うように言葉を掛ける悟くんに小さく頭を振った。
「いえ…すみません、構わないで下さい。
確かに…、比較されたりするのは今でもすごく嫌です。…だけど、それが理由じゃないんですよ。
きっと、彩人兄も幻滅すると思うから…。私が専務と、」
その時にはもう泣き止んでいたというのに、顔を上げることが出来なかった。
これまで人前で泣く行為が恥ずかしい、と我慢強かった自分はどこへ行ったのだろう。
同時にロボット男によって、こんなに脆く変わっていたのだと気づいて、ただ虚しさが募った。
「――全部知ってるよ」
「・・・え?」