戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
確かにヤツが口にした“互いの利潤のため”と考えれば、ここに身を置くのは仕方ないのだが…。
「はぁー、…そろそろ行くか」
取り敢えずの身支度を終えて全身鏡で確認し、上品なバッグを手にして玄関のドアをガチャリと開けた。
このムダに、だだっ広い玄関にもウンザリするな。こうなれば部屋のアチコチに難癖をつけたくなる。
「――朝からモチベーションを下げないで頂けますか、」
重い溜め息とともに惰性で玄関のドアを開け放てば、その先で淡々とした耳慣れた声が鼓膜を揺らした。
「…何で、居るんですか」
さらに今日のテンションを下げてくれる男が待ち構えていたとは知らず、密かにビックリしたのだが。
何やらその本心がバレるのは悔しくて、コチラも冷たい視線と言葉を投げ返したというのに。
「ああ、その前に挨拶が先でしたね。
おはようございます、怜葉さん」
「…おはようござい、ます」
何なのよ、このマイペースを絵に描いたロボット男は。もう呆れて物が言えないわ…。