戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


目を伏せる寸前に捉えてしまった、苦渋に満ちた表情の兄の表情によって。


それがまた直後に告げられるであろう、私の望まない言葉を予測させたから――



「怜葉…、関係なかったオマエまで知らず知らずに巻き込んで、ただただ本当に申し訳ない――

もう分かっていると思うけど…、俺への復讐のために妹の怜葉をその対象に選んだに過ぎないんだよ…。

いいかい?金ならどうにでもなる…だから、早く離れた方が良い…。今日はそれが伝えたかった、」


「な、んで…い、今なの…?」

「…悪かった、」


「ひ、どいよ…っ、あ、たし…」


ようやく絞り出せた声は、過去への責めか、はたまた現在の関係を絶ち切らせる責めか――


その区別が自分で整理出来ないほど、兄の言葉どれもを受け入れたくはなかった。



好きな人と離れることはあまりに辛い…、だけども決定的な失恋理由は想像以上に厳しいもので。


どうにもならぬ現実に待ったをかけて俯けば、膝上に置いていた手の甲へポトリ涙が落ちた。


2人からは何の答えを貰えないまま、再び静まり返った部屋内では孤独感が増してゆく。


そのせいでなおさら、“嘘はつかない”と言い小さく笑った、いつかのロボット男の顔ばかりが浮かぶのだ。



「ひっ…、くっ、」

嗚咽が漏れ出る惨めな泣き声は、ああ今まで素直に気持ちを伝えれば良かったと後悔ばかりを募らせた。


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