戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
それでももう一度…何度もトライするべきでは?、と口にしたくても。
あまりのショックに見舞われたせいか、なぜか私まで胸がつかえた感覚に襲われる。
辺りを窺うのは失礼と分かっていても、どこに焦点を置けば良いか分からない弱気な心が視線を泳がせた。
「ううっー…、ひっ、く、」
顔を覆って泣く朱莉さんの姿をチラリ窺えば、先ほどの話はすべてにおいて嘘を吐いてないと一目瞭然。
押し寄せる事実…いや、こうなるとどれが真実であるのか分からず。いつも以上に動きの鈍い脳内は、未処理のまま蓄積する。
逃げた私が居合わせなかった空白の期間――いったい2人に何があったのか、所詮は話を聞くことでしか理解出来ない。
到底すべてを短時間で一気に分別し整理しようとすれば、脳内はパンクするに決まっている。
それでも私は彼女たちの件以上に、向かいに位置するロボット男の反応の方が何よりも恐怖であった。
心と身を委ねてしまった目の前の男がこの事実を知ったことで、偽者がとうとう烙印を押されるのはあとどれくらいか。
迫り来るものが分かっていても、カウントダウンをするのが嫌だと俯き避けるのも辛い。