戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
「今日…こうして、彩人のことを信じた怜葉ちゃんなら、彗星のことも信じられるよ。
――まあ、こうなったのも彗星が…」
「いや!言わなくて良いですから」
低く落ち着いた声色をまた響かせ、頑なな私を諭すように優しく話す彼を制したのはなぜか専務である。
「言わないのが悪いだろ?
――可愛い怜葉ちゃんをイジめるのは良くない」
「…苛めていませんよ」
「あの…、もしかして――お知り合い、とか…?」
あまりに淡々とした口調のままに言い合いをされては、聞いているコチラの方が薄気味悪く感じてならない。
「へえ他の男を気にするんですか。この状況で」
「普通気になると思いますけど、この状況では」
「では、気になさる必要はありませんよ」
「質問の返事になっていませんが?専務」
そう思いながらも、2人の関係性が見えないからと割り入って尋ねてしまった私は、ある種のチャレンジャーかもしれない。
ちなみに残りの方々はどう感じたか、とチラリ窺った前方で捉えた光景――
それは綺麗さっぱり私の思惑が外れ、完全にこちらをスルーしての甘い世界感を築き上げていた。