戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


今もこの先もずっと前しか見ていない彼に気持ちは伝えられない。と、ここでも未だ体の良い言い訳を作ってしまう。



ようやく少しは成長せねばと省みていたにもかかわらず、大事な局面でつくづくターニング・ポイントを逃す自分はどうしようもない…。



「…思ったことを言葉にすると案外、何でも安っぽく感じますね」

「え…?」


「ですが、」

その言葉の続きを聞くよりも早く。“うわっ”と可愛げのない声を響かせた私の身体がふわり宙を舞った。



「な、なんで…!」


「暴れると落としますよ」

一気に持ち上げられた無防備すぎた身体は、力強い腕で支えられているため落ちることはないと思われるが。


高速エレベーターが到着を告げた階で密室空間から抜け出したものの。私の脳内はパニック継続中のため最後の発言にも反論出来ない。



しかしながら、どこか不安定であり心地よくも感じられるこの不思議な状況が。どうしてだろうか、以前の出来事を思い起こさせる。


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