戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
ああもう苛立って仕方ない。この男と会話をしていると常に、調子を狂わされるばかりだ――
可愛げがなくても事実だから気にしない。本当にいったい何なの、この身勝手ロボット男は…!
「眉間を寄せると老化が早まりますよ」
「よっ、余計なお世話なんですけど…!」
「貴方は笑っていた方が良いかと」
不満を露わにして、ジロリと鋭く睨みを利かせると。今度は効き目ゼロだと言いたげに、クスリと小さく弧を緩ませた男。
不覚にも私はそれに絆され、眼光の鋭さを徐々に失ってゆく。…これでは惚れた弱みにすら負けている。
「…お世辞なんか、」
それらを認めたくないと反発して睨みつけるのは常で。容易く私を操れる彼には、これもバレているに違いない。
この状況にしても然り。逃げようとすれば脱出可能でいて、小言を言って受け入れているのだから――
重なった視線に言葉さえ見つけられず、暫しの沈黙が続いていたものの。それを断ち切ったのはまたしても彼。
「正直に言えば、偶然の産物でした」
「な…に、いきなり」
閉じていたその瞼がゆっくり開いたと同時――心地良い声音が紡いだ真の意味を探れない。