戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
もちろん“家族”のカテゴライズを外れ、まったく接していない私の不確かな直感だとしても。
あの眼差しにゾクリ恐怖を覚えたのは、その瞳の色が昔の父以上に無機質なものに感じられたせい。
その時の私は、社長からの詰問で必死だったのは事実でも。あとになって思い起こすと、彼ら2人が対峙した際のその違和感がやっぱり拭えず。
それと同時に過去の息苦しい記憶まで蘇えるから、…父にはやはり会いたくないと心に誓っていた。
「と、取り繕いって、」
「ああ全てがビジネスに繋がりますからね…。たとえ表面上でも、仲睦まじさをアピールするのが当然の義務でしょう。
そうして、よき親子・よきビジネスパートナーとして、会社の広告塔になることが必要とされますし。
今後も会社をさらに発展させて盛り立てていくこと。それが役員として、企業のトップに立つ身へ密かに課せている役割でもあります。
これもすべて会社と自身の立場のため――自分の感情とかけ離れた仕事と思えばどれもが容易いものでした。
まあ素性を知れば知るほど、あの人の人間性にはつくづく、幻滅させられましたがね…。
それくらい俺は、昔から利潤しか追わない父の人間性や傲慢さを忌み嫌っているんです」
ロボット男が前方へとどこか遠い目を向け、いっそ私まで清々しくなるほどの口調で言い切った。