戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


さすがの視線に怯んだものの、…かよわい女子へ向けるモノではないと主張したい。



「確かに俺は朱莉の身内として、彩人さんの件に腹を立てたのは事実ですが、ただそれまでのこと。
さきほど、怜葉さんも見たでしょう?朱莉を本当の意味で笑顔に出来るのは、彩人さんだけなんですから。

付け加えると以前…、俺が彩人さんについて少々悪態をついたら、朱莉には一発殴られましたがね――

“もう一度言ったら殴るだけじゃ済まないわよ?彼を冒涜するのは、私を揶揄すること以上に許せないから”とね」


「…あ、朱莉さんて、…パワフルなんですね」

華奢な外見から来る、繊細で儚げな印象…は、彩人兄との再会時点で少し崩れていたけど。


美麗な顔から想像も出来ない行動に打って出る彼女はすごい。…とりあえず苦笑と抽象的な発言に留めるのが賢明だろう。


「ええ、見た目で得をするタイプです」

「…、」


いやいや。そのフレーズは思いきりアナタの方が当て嵌まってますが――と、ここではハッキリ言うべきか?



こうして話してくれたすべてが事実だと納得して、疑念はすべて晴れたと信じてしまいたい。


それでも女とはメンドウな生き物で。彼女は好きじゃないと言う発言に、拭いきれぬ疑いが不安とリンクする。


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