戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
最悪だと思っていた彼との出会いが、自分の人生を変えるターニング・ポイントだったこと。
これも今ならば、すべての事柄に何度も“ありがとう”と、笑って伝えられるだろう――
* * *
ロボット男もとい専務と、お金を通じて始まった関係も早1年が経過しているものの。
今日もフツーにオフィスの一角で、気の置けない同僚たちと何気ない話に花が咲いてしまう。
「…トッキー、本当にあっという間だな」
「うん、そうだねー…」
「ていうか、婚約してた時点でそれが付加するのもフツーでしょ?やっぱり加地くんって、ちょっとオカシイのよね。
まあ、だからプロポーズ出来ないのか。いつも絶妙なタイミング外してるからね」
「由梨キツイよ、さすがにそれ…」
「だってね。昨日も彼女に家事全般させられたとか泣きついて来て、いい加減ウザイのよ。
そんな話をこれから私ひとりが聞かなきゃいけないとか…、今から付き離しておきたいし」
「…まあ、それはよく分かる」
「トッキーも何気にひどいだろ」
「いつも言っているけどね、彼女の方が可哀想だから」
相変わらず私と由梨が情け容赦ない発言を重ねるため、ガックリと肩を落とす加地くんに今日も笑うばかり。