戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


さらには裏工作のためなのか、数日前に同伴出社させられたこともまた抜かりがなくて苛ついた。


その冷たすぎる無表情な男との関係に、一切の進展などあるわけ無い。考えるだけで体温が氷点下に落ちそうだ。


ちなみに第二新卒者の受け入れ時期で忙しい人事部は、数日前から残業がかさみ始めているが。


残業時間分は収入も増えるし、何よりあの居心地の悪い空間に居る時間が減るから却って良い。


定刻を過ぎて人もまばらなフロアを歩き、コーヒーを飲むために加地くんと一緒に自販機を目指していた。



「なー、何で結婚する気になったんだよ?」

「…分からない」

「結婚って、そんなもん?」

口を濁した私のビミョーすぎる返答に、ふーん…と小さく相槌を打ちつつ、何となく納得してくれた彼。



“婚約なんてウソだよ!”と本音とウソであることを教えてあげたいけども、ここは苦笑で乗り切った。


彼が同期でいて信頼のおける友人でも、由梨以外でこの会社の人間にバラすことは出来ない。


というのも由梨の場合は“すべて”を知っているからで、それこそ絶大なる信頼を寄せているため。


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