戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
失礼だけども加地くんの場合は違うし、何より下手な問題に巻き込めば彼の出世に響きかねないもの…。
「これだろ?」
「うん、ありがとう」
優しい彼が今日もお金を入れ尋ねてくれたあと、そっと差し出してくれるのは温かいカフェ・オレ。
疲れた時は給湯室のコーヒーサーバーで淹れるより、自販機まで歩いてリフレッシュも兼ねた缶コーヒーがお決まり。
あったかい缶で手を温めてからプルトップに手をかければ、不意に感じる視線がそれをためらわせる。
「…なぁ、ちょっと話があるんだけど」
「なに?改まって」
「いやー…。ちょっと入らねぇ?」
「…すぐ終わる?」
「あー、大丈夫だよ…」
見た目はサッパリした加地くんだが、煮え切らない物言いをする時は決まって良くない話が多い。
だから何となく良くないこととは分かっていたが、促されるように2人で近くの小会議室へ入った。