戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
10席ほどのコの字のテーブル席に向かい合って腰掛け、話を振って来た彼をジーッと注視する私。
すると暫くして、何かを決めたように大きく息を吐き出した加地くんの態度に疑問が募るばかりだ。
「なぁ…、専務って浮気してねぇか?」
「・・・は?」
てっきり仕事の失敗や相談ごとかと思っていれば、なぜかロボット男の浮気疑惑を持ちかけられる羽目に。
その大きく外れた予想のせいで目を丸くした私は呆れから、返す言葉が見つからなかっただけなのだが。
「いや…そのさ、オレ見ちゃったんだよ。
4日前に彼女と行ったホテルでさ。その…、専務とトッキーじゃない女が居んの」
どうでも良いことだが。ここで出たトッキーとは、以前から同僚に親しみを込めて呼ばれる私の愛称だ。
対してカミングアウトした加地くんといえば、もの凄く気まずそうな表情を浮かべながら窺って来る。
そして無言でいることに耐えかねたのか、チラリ、チラリと言葉を発せず、私の表情を気にしているようだ。
とても申し訳なさそう顔をしているものだから、まるでコチラが悪い事でもしたような気分に陥るわ。