戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
冷淡で冷酷すぎるロボット男が、綺麗な女性とホテルで逢瀬を重ねていたとはね――
「あの専務の笑った顔、オレ初めて見た」
どうやら彼の話では、あの貴公子と謳われる男にも見劣りしない美人だったらしい。
ちなみに彼女との記念日ディナーのために、ホテル内のレストランに居たそうで。衝撃的な光景に出くわして、たまげたようだ。
確かに専務が女性とフリーを過ごすのは構わないけど、その専務は私と婚約発表したばかりで、相手は自分の同僚ときている。
いきなり進展を遂げて婚約した同僚が知らずにいるのはあまりにも不憫で、密かに心配してくれていたようだ。
「…関係無いよ」
その加地くんにニッコリ笑って余裕を見せた私は、そのあとの残務を何事も無かったように黙々と終えた。
そうしてひとり夜空を見上げた現在、ポツリと虚しく紡ぎ出した言葉は消えていく。
働いているオフィスから東京メトロで1駅の近さとはいえ、なぜかマンションへの道中を歩く選択をした。
おかしいな。連日の残業で疲れているし、一刻も早く帰宅したい筈なのに。よく自分で自分が良く分からない。
そもそもモヤモヤするのが間違いだ。“一切の干渉はタブー”な契約うんぬんより、私はロボット男に興味ゼロだもの。