戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
お決まりメーカーの缶ビールを3本ゲットし、それから総菜コーナーへ流れるのも定番コース…。
「お酒だけでは身体を壊しますよ」
「・・・」
今日は野菜不足だなと反省し、季節野菜の30品目サラダを手にした瞬間。
いま一番聞きたくも無い声が、何やら背後で響いた気がする。
いや、空耳でありたいが間違いではない。
なぜかバツが悪く思うのは悔しいが、買い物カゴへとそのサラダを入れてから振り返ってみれば。
アイドルの流行曲がBGMに流れているコンビニとは、まったく以って不釣り合いなロボット男が淡々と見据えていた。
「…何の用ですか」
「帰宅しようとした時に貴方を見つけましてね」
いやいや。見つけられたとしても、そのままスルーして下さって構わないのですがね。
と言いたいものの、真っ黒な瞳で見据えられれると、またもやフラストレーションが溜まってしまう。
嫌味の一言も返せずに黙っていれば、手にしていた買い物カゴを素早く奪ってしまったロボット男。
ぽかんと呆気に取られる私をよそに勝手にレジへと進み、合計1035円の会計に出したのは何とブラックカードだ。
聞いたところによると、買おうと思えば戦車まで買えるらしい、いわば限度額の無いカードご利用とはさすが次元が違うな。
「怜葉さん、行きますよ」
素早くレジ袋を受け取って手に提げるという似合わない姿で、惣菜コーナーで佇んでいた私を促してくる。
ああもう、この男は訳が分からない。若干パニックを起こした脳内を整理し、あとに続くしか無かった。