戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
「それより、貴方に渡す物があります」
というより。このロボット男は、失礼発言の砲弾を投げ込んでおいて置き去りか?
私の老化現象などこの男に興味はサラサラ無いだろうが、幾らなんでも失礼すぎる。
アンチエイジングのフレーズが脳裏を占領する中で、差し出されたのは小さなケース。
某ブランドの名前と特徴色でソレが何か分かるから、タラリと嫌な汗が背中を伝った。
「疑われるのを防ぐ為に、今からつけて下さい」
「い、今じゃなくても…」
チラチラ視線を送っていたものの、その箱の中身まで身につけろというロボット男。
何とか逃げようとニッコリ笑い返そうとしたクセに、オカシイほどに顔が動かない。
絶対にこれは厚化粧のせいだ。メイクさんがきっとファンデをのせ過ぎたんだと思う。
その間も相変わらずの眼差しを向けてくるから、もう明後日の方向を見るしかない。
気まずいなんてモノじゃない。ロボット男に勝てる話術など、私にある訳無いし…。
「自分でお填めになるのが、それほど嫌なら…」
「い、いえ!お気遣いは無用です!」
とフゥ…とひとつ溜め息をついたあと、おもむろに席を立ち上がった男のせいで。
何を思ったのか。我先にと小箱からソレを取り出し、薬指へと強引にねじ込んだ。