戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
コレでも一応は“蝶よ花よ”と、厳しくも大切に育てられて令嬢だった時期もある。
だけど…尊敬していた人からの一言が、そんな日々とのエンドを告げてしまった。
今となっては過去でしかないし、むしろ歌舞伎を毛嫌いしているほど避けている。
必死の努力で培っていた自信がゼロになり、将来なんて…と思ったのもこの頃だ。
こうして負のオーラを纏って来たから、将来を誓える人と巡り合えなかったのだろう。
ずっと都合の悪い事に対して、いつでも苦笑で切り抜けて来た自分に今日ばかりは嫌気がさすわ…。
「――私は、見捨てませんよ」
「・・・え?」
すると沈黙を切り裂くように淡々とした声音が耳に届き、いつしか料理へと見下げていた視線が上昇する。
似つかわしくない発言に目を丸くした私は、ゴクリと小さく喉を鳴らしてその張本人であるロボット男を見つめた。
それが期待して続きの言葉を待つ女のように、期待ある瞳を向けていたとも気づかないまま…。