戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


今日は風邪を引いてしまった由梨が休んでいるため、その膨大な資料のヒト山だけでもと片していたのだ。


この忙しい時期は一日放置すれば恐ろしく仕事が溜まるだけで、さらに体調不良で出社すれば捗らない。


彼女がムリをしすぎないで済むほどヘルプをするのも、イレギュラーな事態を想定すれば当然。

同僚への気遣いでありながら、業務的にもみても理に適っていると思う。



ちなみに御託を並べる自分の業務はどうかと言われれば、ソレなりに片付いているから良しとしたが。


何より仲良しの由梨が居ないとランチもつまらないのは事実であり、さらに食欲もないのが本音。


スティックタイプの栄養機能補助食品をかじり、PCと格闘してランチ抜きな現在である。



どこか良い人ぶっているのかもしれないな。結局は仕事をしている方が何も考えなくて済むからなのに。


そんな私の考えなど、同僚として付き合ってきた加地くんの表情では、どうやらバレているようだ。


あんなにがむしゃらに動かしていた手が静止したところ、トントンと私の肩を叩いて落ち着かせてくれた。



「まっ、イライラにはケーキだろ。行かねえ?」

「…オゴってくれるの?」

「とーぜん。で、どうする?」


「もちろん行く。早く行こうよ」


俺の彼女なみにゲンキンなやつと笑うから、褒め言葉らしいその言葉に思わず笑ってしまった。


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