戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
そうして席を立ったところ、休憩ゼロで働いていた事を知っていたからか。部署の課長は“早く帰って来いよ”と言うだけ。
我が人事部の課長は驚くほどに緩い。というより、デスクワークの時と外での顔とがまるで違う人である。
そんな課長の声に送られて2人でオフィスを抜け出せば、優しいビル風の感じる中を2人で並んで歩く。
いつも私のスピードを合わせてくれる加地くんは、ロボット男より見上げないから10センチは低い?などと比べていた自分に恥じるばかりだ。
ああ、そうか。今は頭の中が疲れすぎているんだと適当に理由をこじつけ、ひとり小さく頷いていれば。
「トッキー、…専務とはどう?」
「なに?まぁ大丈夫よ。フツーだから」
隣を静かに歩いていた優しい同僚に、なぜだか異様にビクビクとされながら尋ねられてコチラが困るわ。
「フツーって?」
「この平和な毎日」
すかさず入った問いにも、ふふっと笑いながら言えば、さらにビックリされてしまったが本当だもの。
どうもこうも進展する訳がないのよ。あのロボット男には、何も求めない事が“フツー”なのだから。