戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
“あ…怜葉さんの退社時間は、ちょうど来客と重なりますね。
終わったら即・秘書課へ行って下さい。専務室へ通すように頼んでおきます”
昨日のロボット男は、こちらの思いなど知る由もなく。
あっけなく手を離してからは、どこまでも業務的に指示を流すから憤慨した。
プレッシャーと権力で加地くんを置き去りにさせたうえ、私が怒り任せにパンプスを鳴らしても追って来なくて。
二度と言う事なんて聞くか!と考えていた筈が、終業後は直ぐに重役室へ向かうエレベーターに乗ってしまった。
ちなみに社員の管理と育成を主に行う人事部と重役の管理と対外的気配りを行う秘書課では、似て非なるものだと思う。
さらにどういうわけか当社の秘書室は、派手でいて色々な意味でキツい女性ばかりが揃っている。
まさに触らぬなんとか…で滅多に近寄らないでいた。
むしろ女性特有なイザコザ回避には、近寄らない方が良い部署ナンバー1な気がする。いや、これは冗談をおいての話だ。
ああ嫌だな…という思いでドアをノックする手を動かずにいれば、内側からガチャッと開いてしまった。
スッと開いたドアに、心の準備が出来ていないと焦る。それと裏腹に、咄嗟に身構えていたのは最早クセだろう。