戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
これでも仕事は地味にこなしてきたし、仕事内容も割と性に合っていると思う。
休日のショッピングやお食事とか、それらが日々に潤いとご褒美として楽しめるOLの位置で十分なのに。
なぜだろう…、たった数日の間で私の今後はガラッと変貌を遂げようとしている。
ああ、そんなの愚問よね?――これは、大嫌いだと叫びたいロボット男のせいだ…。
「ちょっと怜葉!
アンタ婚約する…ていうか何で専務…!?」
「え…、あー…うん。そうだね、」
ロボット男、もとい高階 彗星との契約を交わしてから2日が経過した本日。
慌てふためく同僚の由梨の発したセリフに、朝から顔をピキピキ引きつらせる私。
「だからぁー、何でアンタと高階専務なの!?」
悲しいかな…。決して認めたくないそのフレーズが、再びロビーで響く羽目となる。
「え…、あの子なの?」
「えー!い、意外…」
大きな声のお陰で静まり返ったロビーで、誰かの声を皮切りに視線が一点に集まった。
「ちょっと怜葉、聞いてんの?」
「…はは、早く行こっか」
連休明けの出社ほど憂鬱なものは無いが、出社拒否をしたかったのは今日が初めてだが。
元々宣告があったし、覚悟はしていたけども。コソコソ逃げ切り作戦は失敗に終わった。
ひとまず周りの目を気にしない由梨の腕を取り、階下に居たエレベーターへと乗り込んだ。
その密室空間においても注がれるのは好奇の視線で、流石の彼女もこの空気には苦笑い。