戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
密室では小声を発する人はゼロだとしても、目は口ほどに物を言うからイタイよ…。
「ねぇ、何で一緒に来なかったのよ?
これだと怜葉だけに目が向くし…、嫌じゃないの?」
「え?ああ、大丈夫よ!私なら…」
勤務する階のフロアで停止したエレベーターを出ると、すぐさま尋ねられて首を振った私。
“婚約発表を社内メールで知らせしておきますから。休日明けは覚悟して下さい。
アナタの場合でしたら、ソレくらいの波風にも鋼の心臓で立ち向かえますよね?”
本当はロボット男が悪い…!コッチの迷惑も顧みない勝手さに、今ごろ苛立ちが募る。
2日前のあの男とくれば話が終わった途端、私を置き去りに仕事へ戻ってしまったし。
今日だって然り。こうなるのを分かっていて、自分の身は自分で守れスタンスのようだ。
ああ専務じゃなかったら…とは思うけど、今さら後悔しようが全てがアトの祭りだから。
ジロジロ、そしてヒソヒソ耳障りな噂する声に囲まれ、肩身を狭くしてオフィスへと向かった。
まあ花形といえる秘書課や受付嬢ならまだしも、オマエなの?って顔をされるのも納得だ。
そもそも顔を知られていない時点で、私がしがないOLであるという意味合いだし。
あのロボット男の相手が周りの期待を大きく裏切った女とは、どう思われるのか…?