戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


まさに身勝手かつ短絡的で、お子様すぎるとは承知しているけども。
こちらが感情を昂らせていてもなお、繰り返される冷たい声での問いかけ。


これが自身が望んでやまなかった、ノン・シュガーな関係だと教えられると悲しさが取り巻き始めた。


だからこそ、ぜひ聞かせて欲しい。


そもそも今日の約束を、すっぽかしたのは誰だ。この状況を作る原因を見せてきたのは誰だ。


すべてはアナタのお陰でメチャクチャな思考で、こうして逃避を図っているというのに。アナタは私にそれらを白状させる気なのか?


そう思案は幾らでも出来るのだが、結局はその一言すら吐く勇気のない私。
やり場のない怒りとともに、ムダな悲しみをグッと堪えるだけとなる。



「怜葉さん、何が気に入りませんか?」

「べ、べつに…っ」

呆れた声で“何が…”と質される――、すなわち私は、この男にとって物を与えるだけの存在。


裏を返せば、所有物に物以外を与えること以外は不要である。下手な推察をしていけば、なおさら惨めな自分と対面するだけ。


初めの通りに、大人しくこの男を嫌ったまま、“無”であれば良かったのにね。


こうして今頃になって、すべての事実に気づくとはひどく救われないものだ。


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